授業全体像 / 実践手順

生徒はピクトグラムについて理解し, 日常における問題解決をするためのオリジナルピクトグラムを作成した. その後作成したピクトグラムの相互評価を行った. 本実践は2021年5, 6月に東京都立南多摩中等教育学校4年次(高等学校1年に相当)の情報の科学の授業で表1の順に実施した.

表1 授業順序

時数 内容
1 (1)ピクトグラミング導入
2 (2)情報デザイン基礎理論
3 (3)デザインを意識したピクトグラム制作
4 (4)デザインピクトグラム相互評価
5 (5)評価の分析

 

1       ピクトグラム導入とデザイン作成(表1の(1)(2)(3))

1,2時限ではピクトグラムの理論と活用事例を扱い, ピクトグラムについて説明した. またブロック版のピクトグラミングの操作方法を説明した後に自由にブロック版のピクトグラミングを使って,ピクトグラムを作成する時間を設けた.

人型ピクトグラムの姿勢は, 身体の各部位をドラッグ操作することで変えられる. 右側のプログラム表示エリアは, ピクトグラム表示エリアの人型ピクトグラムをドラッグ操作で直立状態から変更したポーズの手順が表示される. 手順表示にはブロックが用いられ, ブロックには人型ピクトグラムの身体パーツ, 角度, 時間を指定する. そのブロック命令に従ってピクトグラムが動作する. 動作時間を指定し, 「2秒間で右肩を軸に時計回りに180度回転させる」のようにアニメーションを作成できる. アニメーションの作成には動作順序とタイミングを考える必要が生じる. その過程でアルゴリズムとプログラムの基本構造を学ぶ.

3時限にピクトグラムの標準化に関する授業を行い, 規格に従って作成する重要性を説明した. 生徒は他人に伝えるためのピクトグラム作成をさせた. その際, 日常の問題に着目し, それを解決するためのピクトグラムを作成した. 生徒は作成したピクトグラム画像データとタイトル文字列を提出した.

2     相互評価(表1の(4))

教員は収集したピクトグラムデータを一括表示するHTMLファイルを作成した.  4時限に生徒はクラスメイトが作成したピクトグラム一覧を閲覧した. 作例を図1に示す. ピクトグラムはその形状で意味概念を理解させるため, 一覧表示の段階ではそれぞれのピクトグラムのタイトルは表示しない.

 

図1.作成されたピクトグラムの例

生徒が作成したピクトグラムを1箇所に集約し,そのピクトグラムに対する相互評価を実施した. 評価の収集にはGoogle Formを使用した. 評価手順を示す.

  1. 教員が各生徒に対し, それぞれが評価するピクトグラムを3つ指定する.
  2. 生徒は指定されたピクトグラムをみて, タイトル(伝えたい内容)を推測し記入する.
  3. ピクトグラムの通し番号を入力すると, そのピクトグラムのタイトルが表示される.
  4. 作成者の指定したタイトルと受け手がピクトグラムだけを見て評価した内容の差を認識し, 改善点を文章で記述する.
  5. 意味明瞭度, 日常重要度を表2に示す7件法で評価する.

表2 評価項目

意味明瞭度 日常重要度
7 非常にわかりやすい 非常に重要である
6 かなりわかりやすい かなり重要である
5 少しわかりやすい 少し重要である
4 どちらでもない どちらでもない
3 少しわかりにくい 少し重要ではない
2 かなりわかりにくい かなり重要ではない
1 非常にわかりにくい 非常に重要ではない

指定した3つのピクトグラムの評価を終えた生徒は, 任意のピクトグラムを選択し, 同様の評価項目で他者評価を行う. 評価結果はリアルタイムに閲覧用のスプレッドシートに表示する. 評価者の情報は収集するが, フィードバック時には匿名で開示する. 評価結果のフォーマット例を表3に示す.

表3 評価結果の例

タイトル
予想
アドバイス 意味明瞭度 日常重要度
7 6 4 5
6 6 5 7 6 6

3     データ分析(表1の(5))

表3に含まれる数値データを用いてデータ分析を実施した. Excelを使用し, 基本統計量を求めグラフを作成し, 考察を書かせた.